タンパク質の形を通して学ぶ「遺伝情報とは」

MHC遺伝子が遠い人の匂いほど、好ましく感じる

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 こんな実験が行われました。何十人という男子学生に、香辛料の強い食事や香水などの使用を避けて、週末の2日間、同じ木綿のTシャツを着て過ごしてもらいます。その後、 体臭の沁み込んだ使用済みのTシャツを、やはり何十人という被験者の女子学生たちに一つ一つ匂いを嗅いでもらい、好感度を評価してもらいました。その結果、女 子学生たちは、MHCの型が遠い男子学生のTシャツほど好ましい匂いと回答したというのです。

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 上で述べたように、MHCの多様性を集団で維持するためには、配偶者はできるだけ自分と異なるMHCの型をもつ人の方が、生まれてくる子供たちのMHCの 型により多様性をもたせることができ、それは免疫理論から言えば理にかなっているわけですが、無意識のうちにそれを体臭でかぎ分けていたというのです。ただ し、MHC自身は揮発性ではないので匂い物質ではなく、MHCと結合する何か揮発性の分子がMHCの型によって異なり、それが匂いの違いとして現れてくると考 えられています。しかし、その後これを支持する研究も、疑わしいとする研究もあり、これが真実かどうかはまだ論争が続いています。

 この理論は、娘が父親を臭い と言って嫌うのもMHCのセットが半分は一致しているからだという論理へとつながるのですが、半分は一致していませんので、その真偽はわかりません。