タンパク質の形を通して学ぶ「遺伝情報とは」

パピローマウイルス

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 ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんの原因として注目されています。女性の8割、そして男性の9割は生涯に一度はHPVに感染するといわれますが、ほとんど免 疫力によって排除されます。しかしごく一部の女性では感染が持続し、子宮頚がんが発生します。男性も陰茎がんの原因となることが知られてはいますが、極めてま れ です。子宮頚がんは感染から発症までは5年以上かかるとされ、前がん状態で発見し、治療を行うことで完治することが可能です。

 ところで、このウイルスががんの原因となると、これまでの話から、このウイルスにDNAを変異させる能力があると考えてしまいますが、実は、そのがん発症 メカニ ズムはこれまでの話の流れとは異なります。HPVの遺伝情報を担っているのは二本鎖DNAです。したがって、前回の講義で述べたレトロウイルスとは異なりま す。そして、この中に、E6とE7とよばれる遺伝子があり、これらから作られるタンパク質もそれぞれE6、E7とよびますが、タンパク質E6はがん抑制遺伝子 p53から産生されるタンパク質やその関連タンパク質に影響を与え、また、タンパク質E7はやはりがん抑制遺伝子であるpRbから産生されるタンパク質に作用 す ることが知られています。こうして、がん抑制遺伝子の作用が阻害されることで、DNA損傷に対する防御機構が不安定となり、それがDNA損傷への対応を混乱さ せ、発がんを許してしまうと考えられています。