エピトープとは、抗体が認識する抗原の一部分のことをいいます。抗体は、抗原全体を認識するわけではなく、構成タンパク質の小さな一部分(アミノ酸の数で 数 個〜十数個程度)と鍵と鍵穴の関係で認識、結合しますが、その抗原側の結合部位のことです。抗原決定基とも呼ばれます。一般に、1つの抗原に複数のエピトープ があり、それぞれ形が異なりますから、鍵と鍵穴の関係にある異なる抗体がそれぞれ認識することになります。
1回の感染で、すべてのエピトープに対して抗体ができるとは限りません。ランダムに抗体ができますから、同じウイルスに感染しても、誰もが同じエピトープに結合 する抗体ができるとも限りません。また、2回目の感染では症状は顕在化しませんが、実は、体内で新たなエピトープに結合する抗体ができることもあり、複数回感 染 することで(いずれも症状が出なくても)、そのウイルスに対するさまざまなエピトープに対応する抗体が産生され、免疫が増強されていく可能性があります。
また、ある特定抗原の侵入により生成された抗体は、その抗原とは異なる種類の抗原であっても、同一のエピトープをもてば結合することができます。したがっ て、新型ウイルスといっても、旧型ウイルスと共通のエピトープをもつ可能性があり、その共通のエピトープに対する抗体をもつ場合には、その抗体が有効に機能す ることになります。東アジアにおける新型コロナウイルスの感染状況が欧米と大きく異なる理由の一つとして、多くの人が、あるタイプの旧型コロナウイルスに感染 し た経験があり、そのときできた抗体が有効に機能している可能性が指摘されました。