DNAの複製時に起こるエラーはかなりの頻度で起こりますが、同時にエラーを修復する機能が備わっているため、最終的には30億塩基対のうち1、2個の間違いで済むよう になっています。ただ、人間の細胞は約37兆個あって、その中で毎日約1兆個の細胞が入れ替わっています。つまり、毎日1兆個は間違えているわけで、どんなに 低い割合でもエラーは少しずつ蓄積されていきます。 2017年に科学雑誌Natureに掲載された論文で、がんを引き起こす変異の3分の2近くは、細胞がDNAをコピーする際に起きたエラーが原因であるという 数学モデルによる解析結果が報告されました。環境要因や内的要因ががんリスクに及ぼす影響がどの程度なのかについて長く議論が続いている中、この研究結果は、 がんを引き起こす変異の多くが親から受け継いだものではないこと、また、がんを引き起こす変異が生じる際の環境要因の役割を強調する傾向がありましたが、生活 様式を変えるなどによっては防止できない側面もあることを示しています。