タンパク質の形を通して学ぶ「遺伝情報とは」

アミノ酸配列からタンパク質の形を予測する

トップページタンパク 質の形を通し て学ぶ「遺伝情報とは」タンパク質の構造と機能 > アミノ酸配列からタンパク質の形を予測する

 自然界では、紐状の分子であるタンパク質はそのアミノ酸配列によって決まる固有の立体構造へと自然に折りたたまれます。そうであるならば、アミノ酸配列か ら立体構造が理論的に予測できるはずです。このタンパク質の立体構造の構築原理を明らかにし、予測理論を構築することはタンパク質研究者の長年の夢でした。し かし、それはなかなか実現しませんでした。

 そのため、タンパク質の立体構造は実験的手法で解析するしかありませんでした。しかし、それは手間のかかる作業で、立体構造を高精度で明らかにするには数カ 月から数年の時間がかかり、多額のコストがかかることも稀ではありませんでした。これがタンパク質研究のボトルネックになっており、「タンパク質折りたたみ問 題」と して50年以上、生命科学の課題とされてきました。実際、既知のタンパク質のアミノ酸配列データは数十億あるのに対し、構造が明らかになっているものはせいぜい10 万といわれており、依然として多くの構造が明らかになっていません。

 こうした中、Google傘下のDeepMind社が、2018年、「AlphaFold」と名付けた人工知能によってタンパク質の立体構造を予測するシ ス テムを発表しました。それは驚異的な精度の高さで与えられたアミノ酸配列から立体構造を予測してみせました。残念ながら、人工知能は、どのような論理で予測し ているかがわからないため、現時点では立体構造の構築原理が明らかになったというわけではありませんが、実用面でのインパクトは計り知れず、タンパク質研究お よびその応用技術に大きな変革が起こるであろうと期待されています。この業績に対して、早くも、ノーベル賞授賞への期待の声が上がっています。