タンパク質の形を通して学ぶ「遺伝情報とは」

コウモリとネズミ

トップページタ ンパク質の形を通し て学ぶ「遺伝情報とは」はじめに > コウモリとネズミ

 by Image Creator

 筆者の小さいころ、コウモリは鳥ではなく哺乳類であり、ネズミに羽が生えたみたいなものだ聞かされていたように思います。 調べてみると、古代ローマの博物学者であるプリニウスは、コウモリのことを「翼持つネズミ」と呼び、鳥類に分類していたとか、 近代分類学では哺乳類に分類されたが、分類学の始祖と言うべきカール・フォン・リンネは、主にオオコウモリの形態から コウモリを霊長類に分類したなどと、その分類に苦労した歴史が浮かび上がってきます。形態的であれ、生態的であ れ、その類似性から近縁関係を論じるにはどうしても主観が入り込む余地があり、結論が出ない状況が生じます。

 こうした問題に、現存するさまざまな種のDNAを解析、比較することから答えを導き出したという報告が 2006年06月20日付けの朝日新聞に載りました。


岡田典弘東工大大学院 教授らは、進化の過程で DNAの中に入り込み、その後は決して抜け落 ちずに子孫に伝わる短い配列「レトロポゾン」を手がかりに、哺乳類全般を遺伝子(DNA)分析したところ、 ウマやイヌやネコなどの食肉類とコウモリだけに 特徴的なレトロポゾンが挿入されていることを突き止めた。このことから、コウモリの系統の位置づけがハッキ リしたものとなり、意外にもウマなど(奇蹄類)やイヌなど(食肉類)と近縁であることがわかった


 分類学がDNAの解析から書き換えられたという話しは、第U部の進化のところでさらに詳しくしたいと思います。