霊長目では約6300万年前、直鼻猿亜目と曲鼻猿亜目の分岐が起こったのとほぼ同時期にヒトなどを含む直鼻猿亜目でL-グロノラクトンオキシダーゼという酵素の遺伝子が 偽遺伝子となり、ビタミンC合成能力を失いました。しかし、ビタミンCは食物から摂取することができるために支障がなく、そのま ま現在に至っています。われわれはビタミンCを体内で合成することができず、食物から摂取しなければなりません。
ところで、その後、霊長類からヒトへの進化の過程で尿酸酸化酵素の遺伝子が今度は偽遺伝子となるという事態が発生しました。これにより、難溶性物質である尿 酸をより無害なアラントインに分解できなくなり、尿酸が体内に蓄積し、結晶化して関節に析出して痛風発作を誘発するリスクを背負うことになったのです。しかし 一方で、尿酸は活性酸素を消去する強力な抗酸化物質であり、同じく抗酸化物質であるビタミンCの代用となるため、尿酸酸化酵素遺伝子の偽遺伝子化により体内に 尿酸がより長く留まることが有利に働いたとも考えられています。