タンパク質の形を通して学ぶ「遺伝情報とは」

環境ホルモン(内分泌かく乱物質)

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 環境ホルモンとは、生体の複雑な機能を調節するために重要な役割を果たしている内分泌系の働きに影響を与え、生体に障害や有害な影響を引き起こす物質のことを言います。 環境ホルモンという用語がポジティブな響きをもつため、内分泌かく乱物質とよぶことが推奨されています。

 たとえば、工業用洗剤として使われている化学物質ノニルフェノール(略称NP)を混ぜた水にメダカの受精卵を入れ、孵化後60日間の変化を観察した研究があ ります。オスの6割にメスの卵巣と同じ細胞が発達する「精巣卵」が見られました。これは、オスのメス化とも言える奇形現象です。実験では、実際の河川で観察さ れ た程度の濃度にNPを設定してあり、実際の環境中でも同様の現象が起きている可能性が示唆されました。

 環境ホルモンの作用メカニズムとして、たとえば下図に示したようなことが考えられています。 エストロジェンは雌性ホルモンで、メス化を促す作用をもちます。エストロジェン受容体は、これまで述べてきたホルモン受容体とは異なり、細胞のなかにあるため、エ ストロジェンは細胞膜を通過して細胞内へとはいります。環境ホルモンがその類似物質で、やはり細胞膜を通過でき、かつエストロジェン受容体に鍵と鍵穴の関係で 結合でき、しかもスイッチをONの状態にすることができると、メス化が進行することが考えられます(オスにもこの受容体は存在します)。あるいは、アンドロ ジェン(雄性ホルモン)の類似体で、アンドロジェン受容体に結合し、アンドロジェンの結合を阻害することで、オス化を阻害し、結果としてメス化へと導く可能性 も考えられます。


環境ホルモンの作用メカニズム

 こうした環境問題が話題になったころ、草食男子という言葉も流行となり、男性の女性化が話題になったこともありました。しかし現時点では、環境ホルモンが 人に影響を与えているということは確認されていません。