タンパク質の形を通して学ぶ「遺伝情報とは」

父親O型+母親B型=子A型

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1997年8月9日 朝日新聞の記事より引用

 これまで血液型の常識ではあり得ないと考えられていた、B型とO型の両親からA型の子供が生まれたという実例が、 大阪医科大法医学教室の鈴木廣一教授によって確認され、このほどドイツの医学誌に発表された。

 デオキシリボ核酸(DNA)による鑑定では間違いなく両親の子供と確認されており、原因は血液型を決める遺伝子で組み換わりが起こり、O型とB型の遺伝子 から、A型のものによく似た遺伝子ができてしまったことらしい。

 血液型はABOという三種類の遺伝子の組み合わせで決まる。

 A型になるのは、両親からもらった遺伝子が「AA」か「AO」の組み合わせの場合。ところが今回の報告例では「OO」の父親と「BO」の母親から「AO」の男児が生まれ ている。

 そこで鈴木教授らが三人の遺伝子を詳しく調べたところ、子供のA遺伝子は、実は母親のB遺伝子とO遺伝子が組み換わってできた、A遺伝子の「そっくりさん」であることが 分かった。ABOの遺伝子は配列が似通っており、今回は母親の体内で卵子が作られる際、偶然にBとOの遺伝子のうち、Aと共通の部分だけが組み合わされたらし い。 鈴木教授らが日本人171人のABO遺伝子を細かく調べたところ、4人から組み換わりの結果できたと見られる「そっくり」遺伝子が見つかった。しかし、その組み換わりが先 祖から本人までの、家系のどこで起きたかについては確かめようがないという。


  解説しましょう。下の図の右に示したように、われわれの生殖細胞(卵子あるいは精子)では、父親からもらった染色体(青)と母親からもらった染色体(赤)を交叉させ、その 一部を交換する現象が起こります。染色体のどこでそれが起こるかはランダムで、決まっていません。したがって、偶然、BOをもつ母親において、B型遺伝子とO 型遺伝子の中ほどで交叉が起こり、A型とまったく同じB型遺伝子の前半とA型遺伝子とまったく同じO型遺伝子の後半とが結合し、A型の遺伝子ができあが った、というわけです。