エントロピー・多様性・複雑系

アトモス時計

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 人の手を介さずに動き続けることができるという、まさに「永久機関」とも言えそうな時計があります。1928年にヌーシャテルの技術者ジャン・レオン・ル ターが考案したアトモスの時計です(下図)。見た目は一般的な置き時計と変わりませんが、盤面の後ろに独創的な機構が収められています。装置を横から見ると 盤面の後ろにカプセル状の大きな装置があります。このカプセル内には塩化エチレンガスが充填されており、周囲の気温の変化を受けてカプセルを膨張または収縮さ せます。カプセルの表面には短いチェーンが取り付けられており、そのカプセルの動きをメインスプリング(写真の左下にある金色の部分)に伝えて動力を蓄えるよ うになっています。

 温度変化を動力源としているアトモスは、わずか1度の温度変化で48時間分のエネルギーを蓄えることが可能らしく、非常に高い省エネ性を備えた時計とい うこともできます。一方で、時間を刻む時計としての精度はあまり高くないようで、1日で10分程度の狂いが生じることもあるようです。



  一見エネルギーを供給しなくても動く「永久機関」のように見えますが、気温の変化というわずかな温度差であれ、温度の異なる熱源(この場合 は、時間差をもってそれが実現されている)さえあれば仕事を生み出す ことができることを示した素晴らしい熱機関ということができます。