エントロピー・多様性・複雑系

チェス、将棋、囲碁

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 少し目先を変えて、最近話題の人工知能の話題を取り上げましょう。
 2016年3月13日の毎日新聞に次のような記事が掲載されました。

 世界トップ級棋士にハンディなしの五番勝負を挑んでいたグーグル傘下の人工知能(AI)の囲碁ソフト「アルファ碁」が12日、3連勝で早々と決着をつけた。 「ハンディなしで勝てるのは10年先」と見ていた世界の囲碁関係者の「常識」を覆す衝撃的な結末。(中略)

 囲碁が「最後のとりで」とされた理由は、初手から決着がつくまでに現れる局面の数を考えてみると分かりやすい。チェスが10の120乗、将棋が 10の220 乗あるのに対して、囲碁は10の360乗通りあるとされ、変化の数が桁違いに多い。そのため、スーパーコンピューターなどの最先端の計算能力を持つマシンパ ワーでも追いつかないのだ。さらにソフトを悩ませてきたのが、そのゲーム性である。チェス、将棋と異なり、碁石には一つ一つに役割がなく、それぞれの位置関係 などによって価値を判断するため、ソフトには形勢判断が難しかった。


 この記事では、チェスと将棋と囲碁の初手から終局までのパターンの場合の数の見積もりがそれぞれ \(10^{120} \) 通り、\(10^{220}\) 通り、\(10^{360}\) 通りと与えられています。通常の感覚では捉えきれない膨大な数ですし、3つのゲームの間にはとてつもなく大きな差があるように感じます。しかし、情報量が場合の数の対数で 与えられるとすると、それぞれのゲームのもつ情報量は

    チェス   \( \log 10^{120} = 120 \times \log 10 \)、
  将棋    \( \log 10^{220} = 220 \times \log 10 \)、
  囲碁    \( \log 10^{360} = 360 \times \log 10 \)

となり、将棋はチェスの1.83倍、囲碁はチェスの3倍、将棋の1.64倍の情報量をもつゲームとなります。これは感覚的にはより妥当な推量かなと思えます。