これまで、単純に、物体の温度は構成する分子の運動エネルギーに比例するといってきましたが、あくまでもこれは、すべての分子の運動エネルギーの平均値です。した がって、実際には、速い分子もいますし、遅い分子もいて、下図に示すように分布をもっています。
温度が高くなると、分子の運動エネルギーの平均値とともにその分布も変わります。高いエネルギーをもつ分子が増加し、化学反応を引き起こすのに最低限必要なエネル ギー、活性化エネルギー以上のエネルギーをもつ分子数が増えてきます。その結果、分子どうしが衝突したときに反応が進む確率が高まります。
逆に、温度を下げれば、化学反応は起きにくくなります。われわれは食べ物を冷蔵庫にいれ、あるいは冷凍して腐敗を防ぎます。腐敗は微生物の活動が原因です が、温度を下げる ことでその活動を低下させることできるからです。なぜ活動を抑えられるかといえば、微生物の体内で起こるさまざまな化学反応の進行を抑えることができるからで す。